3Dプリント技術を活用した新工芸品に触れてきた

3Dプリンタ
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FabCafe Kyoto開催の3Dプリント技術に関する展示会「新工芸展(店)」に先日行ってきました。本記事では展示会の感想や会場の3Dプリント作品とそれに関して調べたことをまとめています。

「新工芸展(店)」とは?

「新工芸展(店)」とは、2022年3月8日 – 26日にFabCafe Kyotoにて開催された新工芸舎の展示会で、3Dプリント技術を活用したプロダクト、アイデアを体験できるのが主旨です。

3Dプリンタという製品自体に関する展示ではなく、あくまで3Dプリント技術とそれを活用した作品がメインです。展示されていた作品や製作背景などの詳細は展示会の公式ページに記載されています。

新工芸舎 solo exhibition『新工芸展(店)』 - FabCafe Kyoto
3Dプリンターの技術を用いた新しいプロダクトやアイデアを体験できる展示企画『新工芸展 (店)』

会場にはスクラム製本で新聞のような形式の冊子がありました。各展示物の情報や写真がまとめられていまが、情報量がかなり多く、3Dプリンタ技術への関心がかなり高まりました。

展示会は終わりましたが、この冊子は新工芸舎のオンラインストアで販売されています。在庫が無くなり次第販売終了とのことなので、気になる方はぜひ。

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店内入り口のtilde作品

展示会開催期間の最終日に行ってみました。カフェの入り口では3Dプリンタで作ったとは思えない作品が飾られていました。

プロジェクト“tilde”

これらの新工芸舎のプロジェクト“tilde”の作品です。tildeのaboutページによると作品はFFF式3Dプリンタで出力されたもので、独自開発のソフトウェアを使うことで編み物のような積層痕が表現可能になるとのことです。

樹脂素材

現地で他の来場者と作品の製作者(?)の会話を聞いたところ、使用樹脂素材はPLAらしいです。プラスチック樹脂ならではの光沢感と編み物のようなテクスチャが混在しているのが、この作品の面白さの1つであると話していました。

使用ノズル径

これらの作品ではノズル径1.0 – 1.5 mmと大きいものを使うことで、編み物的テクスチャを表現しているようです(FFF方式のノズル径の多くは0.4 mm)。

着色技法

作品の色についてはtildeのaboutページの情報だと、以下3つの着色技法を採用しているとのことです

  • 3D印刷後に樹脂用染料で着色
  • 複数色を継いで作られたフィラメントで3D印刷(継ぐときは事前に計算 or ランダム)
  • 複数色のフィラメントをホットエンドで集約して吐出(完全に混ざらず構造色になることも)

1つ目の技法の説明では「染料」という言葉を使っていたので、スプレー塗装や筆塗りのような着色方法とは違い、樹脂自体の色を変えていると考えられます。塗料に含まれる色素(=顔料)と染料の違いが気になる方は以下の解説を参照してください。

顔料と染料の違いと着色後の状態の違い | alumania INFORMATION
着色する際の色料の種類として、その原料の違いに染料と顔料があります。着色=「色を染める」「色を塗る」の語源はこの染料と顔...

2つ目の技法の場合、複数色が配合されたフィラメントは様々なメーカーから販売されているので、3Dプリンタを所有していれば誰でもカンタンに試せそうです。

しかし、販売品では事前に色の混ざり方は決まっています。求める色と着色箇所まで決めるのであれば、公式ページ記載のように事前の計算を行い、その配色パータンを持つフィラメントを自作する必要がありそうです。

3つ目の技法のホットエンド内で複数のフィラメントを溶かして色を作る場合だと、フルカラー3Dプリンタのような3Dプリンタが必要になります。

この種のプリンタは複数のフィラメントをロード / リロードできる機能があるわけなので、単色印刷の3Dプリンタよりは高価です。また印刷設定も複雑になるので、良い印刷条件を出すためにはより高度な知識・技術が求められるかと。

tilde作品に関する調べものまとめ

3Dプリント環境と機種

新工芸舎のツイッター(@shinkogeisha)にて作業環境の写真が公開されていました。奥のForm 3は光造形式3Dプリンタなので、手前のオープン型のFFF式3Dプリンタのようです(Creality CR-10 miniっぽい?)。

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tildeの印刷風景

以下はtildeのメンバーRyo Kosakaさん(@tnctrekit)のツイートです。動画を観ると、各層がどのように積層されて編み物のテクスチャが表現されているのかが分かります。

こちらは多色印刷時の様子で、tildeのメンバーであるHiroshi Mitachiさん(@HiroshiMitachi)のツイートです。この印刷ではMosaic Manufacturing社のPalette 3 Proを使って複数のフィラメントの切替を行っています。

G-code(物理)

余談ですが、カフェ入り口の棚右下にはG-codeが印刷された紙のロールが展示されていました。tildeの作品を印刷するためのG-codeかもしれません。

カフェ店内の作品たち(tilde / nosemono)

そしてカフェ店内に入ると、tilde以外にもさまざまな背景・アイデアの元作られた作品が多く展示されていました。写真はほんの一部です。

石・木材といった自然物と3Dプリント部品が組み合わさった作品は“nosemono”と呼ばれるプロジェクトのものです。

3Dスキャナーを使って自然物の3Dデータを作成し、それらに合うようにパーツ(=人工物)を設計することで、自然物と人工物の調和を楽しむのがコンセプトのようです。

3Dスキャナはかなり高価ですが、最近ではiPhoneの顔認証機能の赤外線で3Dスキャンが可能なので、お持ちの方は専用アプリを使えば手軽にnosemonoを体験できます。

他にもいろんな展示作品がありました

FabCafeの店内はtilde、nosemono以外にも様々な展示がありました。

などなど…

他の展示が気になる方はぜひ展示会の公式ページを確認してください。また、新工芸舎のオンラインショップ「新工芸店」では本記事で取り上げた作品を含め、様々な作品が販売されています。こちらもぜひのぞいてみてください。

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新工芸店は新工芸舎の運営する、新工芸品を扱い、広めるためのお店です。 新工芸はデジタルファブリケーションの普及によって可...

すぐに実践できそうなテクニック

今回展示会に参加して個人的に感動した、誰でもすぐにマネして実践できる印刷テクニックについて紹介します。

そのテクニックはtilde作品のボールペンのクリップとポータブルラジオの持ち手で発見しました。これらの積層痕をよく観察すると、通常の3Dプリントでは出来ない形状変化が確認できます。画像を拡大して、クリップと持ち手の根本部分をよく見てみてください。

おそらくライターやバーナーなどで曲げる箇所を部分的に温め、軟らかくなったうちに人の手で曲げて冷ますことで、クリップや持ち手の形状を表現していると考えられます。

3Dプリントだけで完結せず、のちに人が手で加工しているのが工芸的所作で良いですね。

なお、3Dモデル作成時に曲げ加工後の形状で作れば、加熱・曲げの工程は不要です。しかし積層方向が部品形状に沿った向きなので、メリットもあります(強度向上、サポート材不要など)。

この熱間曲げ加工(金属加工で使う用語だけど、樹脂でも有効?)のメリットデメリットについては、テストモデルを用意して別記事で検証・整理しようと思います。(準備中…)

さいごに

今回の展示会はかなり興味深く、3Dプリントへの関心がかなり高まりました。本記事の文章量の配分からもわかるとおり、tildeは1番印象的で、編み物の質感や色合い、サイズ感などを直接見ることができたのは良かったです。

tildeのような積層痕を活用した3Dプリントを今後やってみたいですね。

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