Prusa MINI+のアップグレード方法を比較【ボーデン/ダイレクトドライブ】

3Dプリンタ
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Prusa MINI+Prusa Researchが販売するボーデンタイプのFFF式3Dプリンタで、同社別機種のPrusa i3 MK3S+とは違ってカラー液晶画面での操作や、有線LAN・Wi-Fiによるインターネット接続が可能です。本体サイズは38×33×38cmと小さめで、部屋に置きやすいサイズ感です。

評価の高いPrusa Researchの製品なので人気がある一方、押出方式がボーデンタイプであることや、一部の部品・構造に課題があることから、部品交換によるアップグレードが推奨されています。

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アップグレードの1つに、Bondtechのデュアルドライブエクストルーダが挙げられます。ギアの個数がオリジナルのものよりも多く、ボーデンチューブ内のフィラメントをしっかり送り出す機構を持っています。

ただ、どうせアップグレードするならボーデンタイプのまま改善するのではなく、Prusa MINI+をダイレクトドライブ化するのはどうでしょう?ダイレクト式であればフィラメントの追従性や、TPUのような軟性素材の印刷品質の向上などのメリットがあります。

そこで本記事では、2種類の押出方法でのPrusa MINI+のアップグレード方法について検討します。

  • デュアルドライブエクストルーダを導入してボーデンタイプの性能向上
  • パンケーキモータ+αをプリントヘッドに追加してダイレクトドライブ化

Prusa MINI+が抱える問題:ヒートクリープ現象

前述のとおり、Prusa MINI+はアップグレードパーツによる改造がすすめられています。以下のYouTube動画では、Prusa MINI+の抱える問題点と、交換部品にヒートブレイクデュアルドライブエクストルーダを紹介しています。

Prusa Mini update: Improvements including Bondtech extruder & heat-break (Teaching Tech)
Prusa MINI のアップグレードパーツ【3Dプリンター】vol.18-2 (3Dプリント師 切り抜きちゃんねる)

これらのアップグレードはヒートクリープ現象というノズル詰まりのトラブルを避けるためです。ヒートブレイクはノズル加熱時の熱をしっかり分離するため、デュアルドライブエクストルーダはギアの個数を2個(オリジナルは1個)に増やすことで、PTFEチューブ内のフィラメントを確実にヘッドに送るためです。エクストルーダの図解や交換方法などの詳細はふう氏のブログが参考になります。

ボーデン式:デュアルドライブエクストルーダ

フィラメントの送りを強化するデュアルドライブエクストルーダは、Bondtech(本家)またはTrianglelab(コピー品)で販売されています。AliExpressのTrianglelabストアだと、円建てで¥5,206でした(2022/10/11時点)。

組立済みのこの部品に交換すればチューブ内部のフィラメントをしっかり送り出せるので以下のメリットを享受できます。

  • ヒートクリープ現象によるフィラメント詰まりを解消
  • 造形品質向上

交換作業はネジをバラして再度取り付ける程度で済むようです。エクストルーダの構造の違いからソフトウェアの設定変更が必要ですが、タッチパネルで完結するのでこちらも簡単みたいです。YouTube上の解説動画も多いので安心して交換できますね:Bondtech3Dプリント師 切り抜きちゃんねる

ダイレクトドライブ化:パンケーキモータ+α

つづいてダイレクトドライブ化の方法ですが、ここでは個人またはチームレベルで設計された2種類のダイレクト式エクストルーダを紹介します。なお、以下のアップグレードだけでは前述のノズル詰まりは解消されないので、熱分離のためにもヒートブレイクの交換は必要です。

Prusa Mini Direct Hextruder (3DP-MAMSIH)

まずは個人が設計したダイレクト式エクストルーダについてです。このエクストルーダでは、円板状の小型ステッピングモータ(パンケーキモータ)と複数のギア、そして3Dプリント部品を組み立てることで、Prusa MINI+のプリントヘッドをダイレクト式に改造しています。詳細はPrintablesにて公開されています:Prusa Mini Direct Hextruder by 3DP-MAMSIH

Hextduder Direct drive Prusa mini (3DP MAMSIH)

フレームは3Dプリンタで各自用意し、ギアキットとパンケーキモータはTrianglelabで入手できるようです。AliExpressの円建てで調べると部品代は以下のとおり、合計金額は¥7,300です(2022/10/11時点)。デュアルドライブエクストルーダと比べると約¥2,000高くなります

ダイレクト式に改造すると、ボーデン式による印刷と比べて以下のメリットが挙げられます。

  • フィラメントの押出し・リトラクション動作が安定
  • TPUのような軟質材料の印刷が可能

しかしダイレクト式自体の、そして改造に伴うデメリットもあります。

  • 作業量が多い(3Dプリント部品の作成、プリントヘッドの分解・組立)
  • パンケーキモータに合わせたフィラメント / プリンタ設定の再調整
  • プリントヘッドの重量増による印刷精度低下(YouTubeのコメントに対し、開発者がプリントヘッド全体の重量は250〜270gと回答)

Prusa ResearchはPrusa MINI+でもFLEX素材が印刷可能だと謳っていますが、以下の動画ではTPUを使うには印刷設定の調整が必要であると説明されています。Prusa MINI+でTPUを使うならダイレクトドライブ化はかなり便利になりそうですが、上記デメリットを理解する必要があります。
≫Prusa MINI+ ダイレクトドライブ計画【3Dプリンター】 vol.46-3 – YouTube

2023/03/13追記:上記の改造プロジェクトに関するレビュー動画が公開されました。感想を見聞きした限りでは強く勧められる改造ではないようです…。やはりプリントヘッドの重量が増えて速度が出せないようですが、TPUを気兼ねなく使えるようになるみたいです。

Prusa MINI+ ダイレクト化の完成と感想 【3Dプリンター】vol.58-1 – YouTube

Sherpa Mini Extruder (Anlin & Annex Engineering)

開発規模が大きく、十分検証されたものを使いたいのであれば、Sherpa Mini Extruderと呼ばれるダイレクト式エクストルーダがあります。Anlin氏とAnnex Engineeringのチームが開発したもので、設計情報や導入手順はGitHub上に公開、Dicordのコミュニティでは情報共有がされています。

このエクストルーダは高温状態のチャンバー内で数千時間の動作テストが行われた実績があるので、安心して利用できると思います。また、AliExpressのTrianglelabストアだとMINI+への取付手順や追加パーツのドキュメント(のURL)が記載され、Prusa MINIの改造結果を紹介しています。実績と導入事例、ドキュメントが充実していることから、こちらのエクストルーダであれば安心してダイレクトドライブ化できます。

MellowFysetcなどのストアでも組立済版が販売されていて、Trianglelabだと¥7,637(2022/10/11時点)と他の方法よりも費用がかかります。組立済みなので取り付けは比較的簡単ですが、モータを追加するのでPrusaSlicer上で設定変更する必要があります。

さいごに

本記事では、Prusa Researchが販売するPrusa MIN+のアップグレード方法について検討してみました。ヒートブレイクに加え、デュアルドライブエクストルーダで押出し性能を向上するのも一つですが、ダイレクトドライブ化することでフィラメント素材の幅を広げるのも良いかもしれません。

Prusa MINI+購入を検討している方、アップグレードパーツを検討されている方の参考になれば幸いです。別の記事でPrusa MINI+をレビューしたので、MINI+に興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

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