3Dプリンタ “Prusa i3 MK3S+”を先日購入して3Dプリントを楽しんでいます。PLAやPETG、TPUなどいろんな素材を使っていますが、安定した印刷品質にとても満足しています。
ただ、素材を変えるたびにフィラメントの交換が必要です。この作業が億劫になってきたので、Prusa i3 MK3S+のアップグレードパーツであるマルチマテリアルユニット (Multi Material upgrade 2.0) に興味が出てきました。
5種類のフィラメントをこのパーツにセットし、スライサーソフトで設定すると自動で交換作業を行ってくれます。億劫な交換作業が自動で済むだけでなく、異種素材を組み合わせた印刷(例えばPLA&TPU)や多色印刷(例えば赤&黒&白PLA)が可能になります。
過去に新工芸舎の展示会に参加して以降、多色印刷に興味があるのでこれを買おうと決心しました。
MMU2Sを安く買うには?
Prusa i3はオープンソースのため、クローン品がAliExpress等で販売されています。3Dプリンタ本体はもちろんのこと、MMU2Sのクローンも出回っていて、オリジナル品よりも安く買うことができます。
構成部品の品質面や信頼性ではオリジナル品の方がもちろん良いですが、購入コストを考えるとクローン品に軍配が上がります。MMU2Sを購入する際はどちらを重視するかは事前に決めておく必要があります。
2022年5月1日現在では1ドル130円台というひどい円安状況のため、オリジナルまたはクローンいずれにしても輸入するためより多くのお金が必要です(2022年8月27日時点では137.56円、9月3日には140.21円! 2023年2月18日では134.12円)。
そこで今回は価格・安さを重視して、MMU2Sの購入コストがどれほどなのかを、オリジナル品とクローン品で比較しつつ検討してみます(レートは$1=¥130)。
オリジナル品 (Prusa Research) の購入費用
まずはオリジナル品についてです。Prusa Researchの下記リンク先で購入できます。
MMU2Sのオリジナル品を購入する場合、合計金額は\$338です。レート\$1=¥130で換算すると、¥43,940となります。
輸入時の税金について
日本ではモノを輸入する際、商品価格が¥16,666を超えると関税や消費税が課税されます(個人使用目的の場合)。MMU2Sは価格$299 (=¥38,870) で基準額を超えるので課税対象ですが、これらの税金を実際に計算するのは難しいのでここでは省略します。下記リンク先の日本関税協会の資料を辿れば計算できそうなので、気になる人はご参考に。
▶︎ https://www.kanzei.or.jp/sites/default/files/pdfs/book/maru20140331.pdf
ただ、輸入に係る税金を除くと見積もりが低すぎる気もするので、ざっくりでも決めてみます。Prusaに関する情報を発信している東方ヒデキさんのnote記事だと、MMU2Sの輸入時の税金を¥4,000〜5,000と見積もっているので、これを参考に¥5,000と見積もることにしましょう。
これを加算すると、合計金額は¥48,940になります。オリジナル品なので品質面の安心感はあれど、かなり高額になりますね…。
ちなみに、1年前の2021年5月あたりのレート$1=¥109で再計算し、税金関係はそのまま¥5,000と仮定すると、合計金額は¥41,842となります。現在の円安がどれほど酷く、輸入への影響が大きいかがわかります。
クローン品 (AliExpress) の場合の購入費用
現在の円安状況でオリジナル品を買うとかなりお金が必要ので、AliExpressでクローン品を探し、良さそうなモノを見つけたので紹介します。
紹介前に:AliExpressの購入価格と商品選びについて
比較時の価格は円決済
前述のオリジナル品と価格比較するなら、商品価格の通貨はドルで比較するのが望ましいです。しかしAliExpressで価格を調べると、「表示価格(\$)×レート(¥/\$)」の金額よりも、円での表示価格の方がなぜか安くなることがわかりました。
「安くMMU2Sを手に入れる」のが本記事の目的なので、ここでは円決済で考えます。
商品を筆者は購入したわけではなく、AliExpressはトラブルが多い
筆者は紹介商品を買ったわけではないので、安全に購入できるかは保証できません。商品詳細の記載内容やサムネイル画像、レビュー、ショップのフォロワー数などを基準に「トラブルが起きにくいかも?」と個人的に判断しただけですので、参考程度に考えてください。
AliExpressでのトラブルはよく聞く話なのでショップ選びには十分注意してください。私も商品が届かないトラブルを経験しましたが、AliExpress側に報告すれば返金処理をしてくれました。
フルセットのクローン品の場合
リンク先のページでは、FYSETCがMMU2Sのクローン品を販売しています。このショップはPrusaのクローン品を扱うショップとして有名で、本体価格と配送料の合計金額は¥27,116です。配送料が割高ですが、本体価格が免税基準¥16,666を下回っているため、オリジナル品を購入するよりも2万円強安く手に入れることができます。
ただし商品の説明欄に「Attention:The package doesn’t include the brass nuts! (注意:パッケージには真ちゅう製のナットは含まれていません!)」との記載があり、ナットが1個含まれていません。
これはワンタッチ継手を取り付けるためのインサートナットを指し、MMU2SのSelector front plateという部品に使われています。これが無いと継手が取り付けられませんが、インサートナット無しでも取付可能な3Dデータがあるので、これを事前に印刷して用意できれば問題ありません。
電子・機械部品のみのクローン品の場合(3Dプリント・樹脂部品は除く)
さらに安くするなら、ステッピングモータや基板などの電子部品と、ねじやベアリングなど機械部品だけがセットになったクローン品も候補として挙げられます。
以下リンク先の商品だとフルセットのクローン品よりも本体価格が高いですが、配送料が無料です。合計金額は¥23,587で、オリジナル品の半額以下で購入できます。
現状の為替レートでは免税基準¥16,666を上回るため税金の支払いが必要ですが、今後円安が改善さえれば、基準を下回ってさらに安く手に入るかもしれません。
ただし上記商品の場合、3Dプリント部品とMMU2S付属のフィラメントバッファーおよびスプールホルダー5個は含まれません。しかし、以下の2点を踏まえるとデメリットではないと考えています。
自前の3Dプリンタで部品を用意できる
MMU2Sが欲しい人は既に3Dプリンタを持っていると思います。メーカー公式の3Dデータをダウンロードし、PETGのような高強度素材で印刷すれば部品を用意できます。また、好きな配色のMMU2Sを組み立てることも可能です。
正規品サイズのバッファーとホルダーは場所を取る
バッファーとホルダー5個はサイズが大きく場所を取るため、代わりに小型化された自作データを使うユーザーがいるようです。
例えば、MMU2Sのオリジナル品とクローン品のどちらも持っているみかんパートナーズさんはバッファーを自作されています。他の方もバッファーやスプールホルダーを自作されています。
3Dプリントで自作すれば、使わない可能性のあるバッファーとホルダーの買わずに済むので、樹脂部品を含まないクローン品が良いと考えています。
ただし3Dプリントの手間と材料が必要なので、フルセットのクローン品との差額約¥4,000と見合うかどうかは一度みなさんの中で検討してみてください。
電子部品のみのクローン品(?)
ちなみに、電子部品のみのセット品も販売されています。クローン品というよりはメンテナンス用ですね。
みかんパートナーズさんのMMU2Sクローン品のレビュー記事では上記リンクをクローン品として紹介されていますが、商品画像にベアリグやねじなどの機械部品が含まれていません。
AliExpress内のメッセージにて確認したところ、機械部品は含まれていないとのことでした。途中で商品内容が変わったのかもしれません。
比較まとめ
調べたものをまとめるとこんな感じです。費用面を重視しつつ、樹脂部品の用意を気にしないなら③クローン品&電子機械部品のみ、それが面倒なら②クローン品&フルセットがおすすめです。
ただし前述のように、AliExpressではトラブルが起きやすい点は認識してください。トラブルが不安な方は高額にはなりますが、安心感を買うという意味でも①オリジナル品を選ぶのが良いと思います。
筆者は結局どうMMU2Sを手に入れたのか?
円安のご時世でもMMU2Sが欲しくて、オリジナル品とクローン品、そしてクローンの中でも樹脂部品を除いたものなどを調べて比較していました。
そんな中Twitterにて、国内のMMU2Sユーザーの方がオリジナル品を¥8,000で譲ってくださるとの投稿を見つけたので、連絡して譲っていただくことになりました。
アンテナを張ってMMU2Sの情報を集めていた結果、円安を気にすることなく国内取引でMMU2Sを入手できたのは本当に良かったです。
さいごに
PrusaユーザーでMMU2Sを検討している方、費用面から購入を躊躇っている方の参考になれば幸いです。
コメント